中国人観光客による「爆買い」は、すっかりお馴染みの言葉
平均20~30万円の買い物をしてくれる中国人観光客は、業績低迷にあえいでいた百貨店にとっては救世主のような存在になっています。
さて、そんな彼らが先を争って買い占めていくのが、炊飯器と温水洗浄便座。
日本人にはちょっと理解しにくいですが、なぜこれらがそんなに人気なのでしょうか。
キーワードは、「食べる」と「出す」
中国人ほど食にこだわる民族はいません。中華料理の歴史と奥深さがそれを物語っています。
その飽くなき欲求を持つ中国人にとって、日本の炊飯器は驚きだったと考えられます。
普通の炊飯器なら、中国にも当然あります。むしろ近年では、ハイアールなどの中国メーカーの炊飯器の方が世界的シェアは高いほどです。
しかし、日本の高級炊飯器は、別格。
現在のところ、マネしたくてもマネできないほど別次元にいるのです。
例えば、パナソニックの「スチーム&可変圧力IHジャー炊飯器」は、高速交互対流と可変圧力の2つの合わせ技で炊飯します。
すると、ごはんはもちもちになり、甘みが広がるのです。
象印の「圧力IH炊飯ジャー 極め炊き」は、さらにクレイジーです。南部鉄器の“極め羽釜”がかまど同様の大火力を生み出します。
熱を逃がさず包み込む事で、お米全体をくまなく炊き上げるのです。
お値段はどちらも7万円以上。
日本製品は、技術を最大限まで高めて商品化する傾向があります。
結果、コストがかかりすぎて失敗する例も多いのですが、炊飯器に関していえば、食にうるさい中国人の心をわし掴みにしました。事実、爆発的に売れています。
中国メーカーも同様のものを作っていますが、現在のところ日本ブランドでないと価値がないので、わざわざ日本に来て買っているというわけです。
「食べる」ことにあれだけ関心が高い中国人ですが、「出す」つまり排泄にはまったく無頓着でした
トイレを清潔にしようという考えは毛頭なかったのです。
これは、おそらく他の国の人も同様だと思います。
しかし、日本人はとにかく清潔好きで、トイレにも空間としての快適性を追求してきました。おそらく古来からそうした傾向はあったと思います。
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そして、そんな民族性によって生み出されたのが温水洗浄便座。
これも他国から見れば異常とも言えるクオリティが生み出した日本製品です。
そんな温水洗浄便座を体験した中国人たちは、トイレにこのような考え方があるのかと新鮮に驚いたと思います。
痔の療法に最適であることも、健康志向の高い富裕層に受け入れられました。
以来、富裕層にとって日本製の温水洗浄便座は、ステータスシンボルになりました。
中国でも人気が高いのは、やはりウォシュレットの登録商標を持ち、温水洗浄便座の普及をリードしてきたTOTOです。
中国のショールームには、連日多くの人が訪れるほどブームは続いています。
炊飯器や温水洗浄便座が人気であるもうひとつの理由が、「転売」です。
これほどまでに人気がある日本製品ですが、誰もが日本に旅行に行けるわけではありません。
だからこそ業者にしてみれば、転売はおもしろいほどよく売れるというわけです。
とはいえ、異常な価格高騰を招いたり、詐欺もあったりして、やはりトラブルの種にもなっています
いずれにしても、しばらくこの「爆買いブーム」は続くでしょう。