中国の国土は広大で、遥か昔、華北と華南のダイレクトな交流は困難でした。それが隋代以降、南北を結ぶ大運河が整備され、水運が発達しました。
そのことで蘇州は運河の重要な中継地点となり、そして杭州は運河の終着点として人・物が活発に往来し、経済や文化が発達しました。その発展ぶりを表す言葉として、「上有天堂、下有蘇杭」(上に天国あり、下に蘇州・杭州あり)という諺があります。下界の蘇州と杭州は、天国のように素晴らしいところだという意味です。
『東方見聞録』の中でも「世界最大の繁栄ぶり」と記されていた。
五代十国時代(10世紀)、杭州は呉越国の都となり、南宋時代(12~13世紀)には事実上の首都、臨安府が置かれました。13世紀後半になると、宋朝を滅ぼした元朝により、大規模な再建が行われ、超巨大都市になりました。マルコ・ポーロは、あの有名な『東方見聞録』の中で、杭州のことを「キンザイ(行在)」として表記し、「世界最大の繁栄ぶり」と記しています。14世紀の大旅行家イブン・バットゥータも杭州を訪れており、『大旅行記』の中で、行き交う隊商の群れ、絹織物など取り引きされている品物について述べています。
杭州を観光するなら、なんといっても中心部の西にある「西湖」でしょう。世界遺産に登録されている優れた景観の湖です。西にある湖という意味ですが、もうひとつ中国四大美女の一人、春秋時代の西施が入水した伝説からも来ています。
また、北宋(10~12世紀)の政治家で詩人でもある蘇軾が造営した庭園などもあります。西湖には逸話が満載で、中国史ファンならきっとたまらないでしょう。
その他の観光地としては、杭州市街の南方、月輪山にある「六和塔」は迫力があります。北宋の頃に建てられた7階建て13層の仏塔で、『水滸伝』にゆかりがあります。
杭州の名産品は龍井茶(ロンジン茶)。中国十大銘茶の一つに数えられるほどの代表的な緑茶です。なお、杭州は広州との混同を避けるため、「くいしゅう」と呼ばれることもあります。成田、関西空港からアクセスできます。