海外の諸外国と日本とでは、社会の仕組みや文化、人の考え方、習慣、価値観などに、さまざまな違いがあります。
そうしたすれ違いが引き起こす、ビジネス上のリスクを「カントリーリスク」と呼びます。
この言葉が特に注目されはじめたのは、中国に進出した日本企業の“苦労話”からではないでしょうか?
アメリカ、韓国、インド、EUなど、日本企業は今や世界中に進出していますが、特にカントリーリスクが大きく注目されたのは、中国でのトラブルが原因のように思います。
ここでは、ビジネスの中国進出がはらむカントリーリスクについて、詳細を確認し、考察してみたいと思います。
中国のカントリーリスクの具体例
まずは、どのようなリスクが考えられるのか確認します。
ビジネス誌やネットメディアの言論、専門家の指摘、実際に中国で経営する経営者の体験談などを、総合的に俯瞰すると、次のようなリスクが浮かび上がります。
【1】国民性の違い
現地での雇用や、現地企業との取引において、国民性の違いからギャップを感じる日本企業も多いようです。
世界基準から見ると、日本人は「働き過ぎ」だと、たびたび指摘されていますね。
中国の人々から見ても、やはり日本企業のワークスタイルは「働き過ぎ」「厳しすぎ」と見える場合もあるようです。
ただ、この問題は、どちらかと言えば日本企業のマインドに問題があるように思います。
『中国人はサービス残業をしない』といった声もありますが、サービス残業が当たり前になっている日本のほうが、問題があるのではないでしょうか。
過度な労働を強要する“ブラック企業”が問題視される今、労働の価値観を変えるべきは、私たちなのかもしれません。
【2】反日感情
カントリーリスクの要因として、中国人の持つ反日感情も指摘されています。
日本と中国の間には、日中戦争という痛ましい過去があります。さらに、尖閣諸島の領有権をめぐる争いもあり、2012年9月には大規模な反日デモが巻き起こりました。
現在もまだ、日中の政府関係は決して良好とは呼べません。
こうした政治的状況から、「中国人は反日感情を持っているから、日本企業も批判や攻撃の対象にされる」という指摘があります。反日デモの事実を考えると、こうした指摘も充分に納得できますね。
一方で、これと反する事実もあります。
たとえば、中国でも日本製品が飛ぶように売れていること、中国から日本への旅行客も多いこと…。
こうした実態を鑑みると、中国国民の全てが反日であるとは言えないでしょう。
日本人の中にも、「中国が好き」という人もいれば、「中国が嫌い」という人もいます。
同じように、約13億人の中国人全員が反日であるとは言い切れません。
『反日の中国人もいれば、そうでない中国人もいる』という当たり前の事実にも、目を向けるべきです。
【3】環境汚染
PM2.5による大気汚染が深刻になっている通り、中国は今、急激な発展に伴う環境汚染問題に直面しています。
大気汚染のほか、水資源の汚染、海洋汚染、CO2の多量な排出なども指摘されています。
自然環境も、人々の健康も、危機に晒されていると言っていいでしょう。
確かに大きなリスクではありますが、これを投資やビジネスのチャンスと考えることが、成功者のマインドでもあります。
私たち日本の持つ環境浄化技術は、世界トップクラス。今、環境汚染にあえいでいる中国は、まさに日本にとって“大規模な市場”とも言えます。
中国の環境問題をリスクと捉えるか、チャンスと捉えるか…。それによって、ビジネスの行く末は180度、変わってきます。日本も中国も、お互いがより豊かになれる選択肢はどちらなのか、考えてみる必要は大いにあるでしょう。
国が違えば、違いがあるのは当たり前
その他、中国共産党の政治的な不安や人件費の高騰など、様々なカントリーリスクが指摘されています。ですが、国が違えば、人も社会も経済も違います。
さまざまなすれ違いが起きるのは、当然なことではないでしょうか?
中国は共産主義国家であり、日本は民主主義国家です。中国は儒教の国であり、日本は仏教と神道の国です。日本は単一民族国家であり、中国は多民族国家です。
社会の仕組みも、文化も、歴史も、考え方も、全てが違うのが当然です。
「日本と違うからリスクだ」と考えることは、急速にグローバル化するビジネスシーンに取り残される結果となります。カントリーリスクを過度に恐れ、批判的な目で海外を見ること…その視点自体が、本当のリスクなのかもしれません。