数え切れないほどの「食品問題」
マイナスなものが多い中国ニュースにおいて、トップクラスのものが「食品問題」です。
物凄いニュースの山で、あれらを見たら「中国には絶対旅行したくない!」と思ってしまうのも無理もありません。
大げさに報道している部分もありますが、事実も多くあります。
実際のところ、中国人でさえ自国の製品を安全だと思っていません。
金に困らない富裕層は、海外の輸入食品のみを食べる生活をしている人さえいます。
なぜこうした問題が後を絶たないのでしょうか。
まさにこれは「現代中国が抱えている病気」といえます。いくつかの事案から分析してみます。
「段ボール肉まん」で広がった衝撃
日本で報道された中国の食品問題で有名なのは、2007年に起こった「段ボール肉まん」でしょう。
北京市の露店で販売されていた肉まんに、なんと段ボール片が入っていたという衝撃的なニュースでした。
同年、JTの子会社が輸入し、生協が販売した冷凍餃子に殺虫剤が混入されており、食中毒が発生しました。
大手企業による輸入品でさえ安全じゃないのかと恐ろしさを感じた人も多いはず。
さらに同年、アメリカなどで、中国産原料を用いたペットフードを食べた犬や猫など数百匹が死ぬ事件が報道されました。
中国の食品問題に関するニュースは、この2007年にとりわけ多く報道されたと感じます。
消費者の不信感がメディアを動かし、メディアが取材すればするほど新たな問題が出てくるという構図だったのでしょう。
この年以降、大小さまざまなニュースが報道され、あっという間に「中国の食品は危険だ」というイメージが定着し、今に至ります。
「食品問題」が起きてしまう原因は3つ
法の未整備
なぜこうした問題が起こるか。原因の一つ目は法律の未整備です。
そもそも中国は社会主義の国で、改革開放以前は「計画経済」という政府主導の配給制度を行っていました。
この時代は食料の品質よりも量の確保が重視されたため、衛生面は軽視され、法整備はほとんど行われないできたのです。
そして、食品衛生法が制定されたのは1995年とつい最近のこと。
なるほど、法律遵守の概念が希薄なのもうなずけます。
2001年、中国はWTO(世界貿易機関)に加盟し、経済的にも世界で存在感を高めていこうと考えます。
この頃から輸出食品の品質向上は改善され始めましたが、国内の食品安全対策は遅れたままで、2000年代、2010年代には様々な食品汚染問題が発生するようになったのです。
農業の構造問題
次に考えられるのは、農業の構造的問題です。
中国において農業に携わっている人はかなり低い階層で、ほとんどが小さな地主農家です。
日本の農協のような経済的な安定を図る組織はなく、生活は苦しいまま。
こうした状況の中で、生産性を無理に上げるため、肥料と農薬を集中的に使用しているのです。経済成長を遂げていながらも、その効果が下層まで波及していないいびつさが、農業の問題を引き起こしているともいえます。
企業のモラルの低さ
3つ目は、企業モラルが成長しない点。
中国は社会主義ということもあり、大手企業のほとんどが政府系企業です。
こうした企業では、中国共産党幹部が経営陣に参加しています。
政府との関係が密接で、癒着も普通に行われています。こうした状況では、政府の厳しい安全管理が徹底されることはありません。
中華料理を育んできた中国だけに、本来であれば、旅行してさまざまな料理を楽しみたいところ。しかし、こうした食品問題が大きなマイナスになっています。
ぜひ、いち早く管理体制の改革と衛生管理の徹底を進めてほしいものです。