中国ビジネスを考える時、避けて通れないのが「人件費」です。一般的には今まで、「中国は日本より人件費が安いから、低コストで製品を作れる」と言われてきました。
ですが現状は、そうとも言えない状況になりつつあるようです。
“中国製品の生産コスト、人件費高騰で米国に肉薄
米ボストン・コンサルティングが25の国と地域で実施した調査によると、中国製品は安価という「王座」を明け渡した。同社の関係者は、「中国の実質的な生産コストは、すでに米国に肉薄している」と指摘した。”
人民網日本語版 2014年06月25日15:03
中国の人件費は、もはやアメリカ並に高くなっている…。こうした事実が指摘されています。
このことが何を意味するのか、考えてみたいと思います。
中国の人件費高騰が意味する4つの現象
【1】日本企業の国内回帰or第三国への転換
日本企業の中国進出の理由は、“低コスト”が大きな原動力になっていました。
ところが、その前提が覆された今、日本企業が中国から引き上げ、国内回帰に向かうことも考えられます。
とはいえ、日本の人件費が国際平均より高いのは変わりません。
もっと人件費の安い、東南アジア諸国などに生産拠点をシフトすることも考えられます。
【2】中国市場の発展
人件費の高騰は、言い換えれば「お給料が高くなる」ということです。働く人のお給料が高くなると、消費購買力の向上につながり、経済がどんどん回っていきます。
日本でも「アベノミクス第3の矢」として、政府が人件費アップの働きかけを行っていますね。
これも、働く人のお給料を上げることで、経済の好循環を生み出し、景気を良くしようという意図があります。
このことから考えられるのは、崩壊が囁かれる中国経済は、逆に“発展しているのではないか”ということです。正確には、各種の経済指標を細かくチェックして判断する必要もありますが…。
生産拠点として低コストの魅力を失うということは、大きな消費購買力を持った市場としての魅力を持つことにつながります。
「中国で作る」から「中国で売る」へビジネスの考え方を転換する必要を感じます。
【3】中国国内の貧富の差の拡大
「中国」と一言にいっても、そこに暮らす人々の暮らしぶりは多様です。
北京や上海など、先進諸国と変わらない文化水準を持った地域もあれば、貧困にあえぐ農村地帯もあります。
日経ビジネス:2013年4月の記事によると、中国には、年収2300元【約3万6500円】・1日の生活費6.3元【約100円】の「貧困ライン」以下の人々が、約1億2800万人いると言われています。
日本の全人口とほぼ同じくらいの人々が、年収3万6500円という極貧生活を送っていることになります。
「中国の人件費が高騰した」とはいえ、こうした極貧の人々がいなくなったとは考えられません。
むしろ、貧富の差が拡大しているとも考えられます。
発展を見せている中国ですが、まだまだ、手を差し伸べるべき人々も多いと言えるでしょう。
【4】中国からの出稼ぎ労働者の減少
中国の人件費の高騰は、将来的に、日本に来る「出稼ぎ労働の中国人」の減少にもつながると考えられます。日本で働いたほうが儲かるから、日本に来る…という、出稼ぎ労働の動機が弱くなるためです。
もちろん、これは単純に収益目的で日本に来る労働者に限った話です。
技術習得や研究、開発などの動機で日本に来て働く人は、まだまだ減少しないように思います。
中国の人件費高騰は、私たち日本にとってメリットなのでしょうか?それともデメリットでしょうか?
中国の生産コストが高くなる=中国製品が高くなることを考えると、デメリットと言えそうですね。
ですが、中国市場の購買力が高くなり、より魅力的な販売先となることを考えると、メリットとも考えられます。
ビジネスの世界は、単純に「メリット」「デメリット」の明暗を切り分けれるものではありません。
一見デメリットに見えても、角度を変えるとメリットになることもあります。その逆もしかりです。