これまたあまり報道されないのですが、中国政府は日本の環境技術に注目しています。なにせさまざまな公害に直面し解決してきたわけですから、中国にとっても大いに参考になるのです。そこで、かつての公害都市を視察し、いろいろな技術を学んでいます。
なかでも川崎市には、大小さまざまな団体が視察に訪れています。
重工業地帯として発展した川崎市は、同時に煤煙による大気汚染が深刻になりました。住民が行政や企業へ訴訟を起こし、規制が強化された結果、少しずつ今の形に落ち着いていったのです。近年は、環境保護産業の発展に力を入れ、クリーン都市として世界中から注目されています。中国からは度々視察に訪れており、ペットボトルのリサイクル、水の浄化、金属加工技術、再生飼料の生産などを手掛ける企業に高い関心を示しています。
このほか北九州市にもよく視察に訪れています。昨年は「中国低炭素モデル都市視察団」という中央政府レベルの使節団が訪れ、研修会が開催されました。北九州市は八幡製鉄所をはじめ、日本の産業を切り開いてきた工業都市でしたが、空は煤煙で覆われ、洞海湾は「死の海」と呼ばれて魚も棲めないほど悪化しました。これも長年の努力で今日の姿に復活させました。
さらには会社ごと買収しようという動きも見られます。2012年9月に浙江省が香港と代表団を組み、日本を視察に訪れました。このときは環境分野で強みのある企業の買収・投資が目的でした。同時に、技術力のある中小企業に向けて、香港や珠江デルタへの工場進出も呼びかけました。
また、北京市の幹部が東京都を訪れ、大気汚染に関する情報交換も行っています。尖閣問題で日中関係が冷え込んでいるなかでも、こうした交流が行われているあたり、中国が環境問題に対して真剣にならざるを得ない状況が伺えます。
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